この文書は、かるがも団地の創作の場における考え方やきまりを記したものです。わたしたちの学びや周りの方の意見等によって、皆さんと相談のうえでその都度改めていきたいと考えています。
なお、ここでいう「創作の場」とは、稽古場・劇場・ワークショップ(以下WS)・オーディション(以下AD)・劇団員同士やキャスト・スタッフとの話し合いなど、創作にかかわるすべての場面のことを指します。
1,安全な創作の場をつくるための宣言
●かるがも団地は、劇団員/演出家/キャスト/スタッフ/その他当団体にかかわるすべての人々の人格や発言を平等に尊重し、また尊重するよう求めます。
●かるがも団地は、創作の場のなかにおいて、いかなる暴力・差別的発言・立場の差やキャリアの差、性差を濫用したハラスメントも許しません。
●かるがも団地は、安全な創作の場であり続けるための努力を怠りません。
2,ハラスメントとは
ハラスメントとは、属性(性別や年齢、職業、宗教、社会的出自、人種、民族、国籍、身体的特徴、セクシュアリティなど)や人格等に関する言動などによって相手に不快感や不利益を与え、尊厳を傷つけることです。行為者の意図に関係なく、相手を不快にさせたり「傷つけられた」と感じさせる発言や行動がハラスメントに該当します。
合同会社Syuz’gen ハラスメント対策講習より
<業務上必要な指導・注意とハラスメントの違い>
○業務上必要な指導・注意
・仕込み中に注意散漫でパネルを倒しそうになった人に対し「集中しろ!」などと強い口調で言う。
×ハラスメント
・上記のミスをその後もしつこく指摘し、威圧的言動を繰り返す。
・上記のミスを注意する際に「これだから男/女は」「今まで何を学んできたんだ」などと、その人の属性やキャリアを否定する発言をする。
「ハラスメント」となりうるポイント
・不快にさせる発言・行為を繰り返し行う。
・相手の属性(明日変えろと言われて変えられるようなものではないもの)や人格・キャリアを否定する。
3,ハラスメント対策
・団体から公演参加者・WSやAD参加者の皆様に対して、権力関係を濫用することを禁止します。
例:今後のオファーなどを脅し文句として利用し無茶な要求をする
・団体から公演参加者・WSやAD参加者の皆様に対して、あらゆる差別的言動・威圧的発言をすることを禁止します。また、公演参加者同士であっても、上記と同様、参加者や劇団員に対してあらゆる差別的言動・威圧的発言をすることを禁止します。
例:俳優の演技へのフィードバックの際に怒鳴る/演技と直接関係がないにもかかわらず俳優の容姿や国籍、セクシャリティ等に言及する/相手のジェンダーによって根拠なく仕事内容を振り分ける。
・公演参加者同士(含 劇団員)の立場の差やキャリアの差、性差などを濫用したハラスメントを禁止します。
例:キャリアが上のキャストが下のキャストに対して自主稽古を強要する/プライベートの食事にしつこく誘う/居住地やSNS、恋人の有無など、プライベートな事柄についてしつこく聞く
・公演参加者同士(含 劇団員)のジェンダーやセクシャリティについて、お互いに見た目や身体の性のみで判断し、決めつけることのないように気を付けましょう。
・創作にかかわる人全員平等に「提案する権利」「断る権利」があることを共通認識として創作を進めます。
・不適切な言動や誤解を招く言動が創作の場であったと感じたら、誰でも進行を中断して説明や謝罪の機会を設けてかまいません。
〔補足〕
ふとした瞬間に、意図せずに不適切な発言をしてしまうことは誰にでもあり得ます。そのようなとき、それが繰り返される前になるべく早く解決し、改善することが大切です。もちろん、暴力・暴言・故意の差別的な言動には厳しく対処します。
【ハラスメント防止のために】
・各公演の顔合わせ時に、本文書の読み合わせを行い、意識の徹底を図ります。また、『EGSA JAPAN芸術分野におけるハラスメント防止ガイドライン_0511』を共有します。
・劇団がハラスメント対策・対応に努めているかを監視する「ハラスメント監査員」を公演ごとに設置します。
《ハラスメント監査員について》
・劇団員・公演参加者以外から最低1名設置します。
・公平性を期すため、ハラスメント監査員が誰であるかは公演終了後まで公表しません。
・ハラスメント監査員は、劇団員とともに相談フォーム(後述)の閲覧権限を所有します。
・相談フォームへの投稿の有無、また、投稿があった場合に劇団員が適切に対応しているかを監視します。不適切な対応が見受けられた場合には改善指示を出すことができます。
・ハラスメント対応において、オンライン上のやりとりはすべて監査員の見えるところで行います。やむをえず監査員が同席していないところで話し合いなどを行う場合は、迅速にその内容を監査員に共有します。
・監査員は相談フォームに投稿された内容について劇団員以外に一切口外してはなりません。ただし、劇団員が適切に機能しておらず、かつ内容に緊急性がある場合に限って、監査員の判断で外部の機関に相談してよいこととします。
【問題が発生した際の対処】
・創作の場において上記のような状況が見られた場合、団体は創作を一時中断してでも状況の改善に努めます。
・団体から参加者へのハラスメント対策として、劇団内での注意喚起を徹底するとともに、公演参加者やワークショップ・オーディション参加者にあらかじめ外部の相談窓口を紹介します。
▶舞台芸術関係者向け性暴力ハラスメント相談窓口リスト
https://harassmentmadoguch.wixsite.com/list/madoguchi
・創作の過程で問題が発生した場合の相談窓口をあらかじめ公演参加者やワークショップ・オーディション参加者に知らせます。
▶劇団員(藤田・古戸森・宮野)
▶匿名可能の相談投稿フォーム(閲覧者は劇団員・監査員)
・問題が発生した場合、安全が確保できるまで創作の方法を変更、または創作を中断します。相談者と話しながら、関係者からの聞き取りや座組への共有など、必要な対処を行います。
<参考文献>
EGSA JAPAN『芸術分野におけるハラスメント防止ガイドライン_0511』
いいへんじ「二本立て公演『器』/『薬をもらいに行く薬』のご観劇をご検討のみなさまへ」
演劇/微熱少年「演劇/微熱少年 ハラスメント規範」
しあわせ学級崩壊 制作部「しあわせ学級崩壊 ワークショップ及びオーディションの運営方針」
東京芸術祭「東京芸術祭ファーム ラボ ガイドライン」
合同会社Syuz’gen舞台芸術に関わる方向けハラスメント防止講座『風通しの良い稽古場のために』資料
最終更新:2023年9月19日
かるがも団地
藤田恭輔
古戸森陽乃
宮野風紗音